「精神注入棒で毎日お尻をたたかれていた人が、突然、一騎当千の部下を持つようになったということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

「なぜ、そんなことが起ったのですか」と町会長。

「父が中国人の武人と真剣で立ち合ったのが原因だと推定しています。」

「お父さんの所属する部隊の兵隊が、全員見ているところで行われたのでしたね」と町会長。

「おっしゃる通りです。父は、その立ち合いで孟宗竹を瞬時に3つにする秘技を使ったのだと思います。」

「それでは、馬賊200人を捕虜にしたときのように、立ち合いが始まったかと思ったら、中国人の武人の首が胴体から離れていたということですか」と町会長。

「おっしゃる通りです。あまりに凄まじい技だったので、見ていた日本の軍人も馬賊と同じように震え上がったのかも知れません。」

「精神注入棒でお父さんをたたいた人は、間違いなく、恐ろしさで震え上がったでしょうね」と町会長。

「確かめようもありませんが、荒くれ者が集まった馬賊が何の抵抗もしないで、数人の日本兵の捕虜になってしまったのですから、その恐ろしさは想像を絶するものだったと思います。」

「なるほど」と町会長。

「そして、この話は一夜にして関東軍の軍人全員に知れ渡ったのではないかと推定しています。」

「なるほど」と町会長。

「そして、翌日、関東軍の司令官から立ち合いの話を聞きたいと言って来たのだと推定しています。」

「なぜ、関東軍の司令官から立ち合いの話を聞きたいと言って来たのだと推定しているのですか」と町会長。

「父に、馬賊探索の任務を与え、一騎当千の兵士を父の部下にすることができたのは、司令官だけだと思われるためです。」

「なるほど」と町会長。

「司令官に認められるチャンスなので、父は、『孟宗竹を瞬時に3つにする居合の秘技をお見せしたい』と返答したのだと思います。」

「なるほど」と町会長。

「司令官は、見たことも聞いたこともない秘技なので、関東軍の将校を全員召集したうえで、父に居合をやらせたのだと思います。」

「なぜ、関東軍の将校を全員召集したとお考えなのですか」と町会長。

「父が、『満州に行ったころは、太平洋戦争が始まる前だったので、軍隊ものんびりしたものだった』と言っているからです。」

「なるほど。お父さんの居合の秘技を関東軍の将校が全員そろって見学するようでは、軍隊がのんびりしていたと言われても仕方がありませんね」と町会長。

「おっしゃる通りです。」

2021/6/7

<筆者の一言>
院長が急激に老化した事実を目にしたので、『天才的な鍼灸師が、なぜ、早死するのか』ということを経絡的に理解することができた。

『深谷灸法』で知られる深谷伊三郎は、ウィキペディアによると、74歳くらいで亡くなっている。名が知られた鍼灸師としては長生きだ。『なぜ、深谷伊三郎は長生きだったのか』という謎が解けない限り、院長のように自己治療する鍼灸師は後を絶たないのかも知れない。

この疑問は常に脳裏にあった。最近、脳がかすかに緩むようになって、なぜ、深谷伊三郎が長生きをしたのかという理由がわかった。<続く>

2024/5/23